リニア・鉄道館リポート

 去る2011年3月14日に名古屋臨界高速鉄道あおなみ線金城埠頭(きんじょうふとう)駅近くにオープンしたJR東海の鉄道博物館「リニア・鉄道館」ですが、早速ML会員の杉並木さんが訪問され、その様子をリポートし、MLに投稿してくださいました。
 今回は、その発言をご紹介いたします。


 19日からの3連休は西の方へ行っていましたが、予定が突然変更になり、21日がオフになってしまいました。そこで、急遽「リニア・鉄道館」の見学を思い立ち、行ってみました。
 名古屋発9時09分のあおなみ線に乗車しました。車内にはリニア館の見学を目的とした子供連れの乗客が目立ちましたが、空席もかなりあって、は予想よりもはるかに少ない数でした。乗車前にあおなみ線改札付近を一回りしてみましたが、「リニア・鉄道館」のポスターらしいものは私の目ではとらえられませんでした。改札係員に開館時刻を尋ねたところ、奥からパンフレットを持ってきて「10時から」と教えてくれました。そこから推測するにはあまり話題になっていないように思えました。
 電車が終着の金城ふとうに近づき、伊勢湾岸道路の高架橋の下をくぐると、車窓左手に真っ白な屋根と壁の建物が見えてきました。改札を出てから地上におりて、折り返すようにあおなみ線の高架下を2分ほど歩き、すぐ右手に折れて屋根のついた通路を50メートルほど歩けば「リニア・鉄道館」です。当日は小雨でしたが、ぬれずに行けました。
 建物の前には長蛇の列、電車よりも車で来館する客が多いようで、さすが車王国愛知かなと思いました。「今日は混雑しているので、9時35分に開館しました」というアナウンスがされ、列は少しずつ前に進み、15分ほど並んで入場できました。
 入場方法ですが、券売機か有人カウンターで入場券を買い、入口の係員に券を渡す方式です。大宮の鉄道博物館のようにICカードをタッチして入る方式にはなっていませんでした。券売機は「トイカ」なるICカードが使えるようです。入場料は大人1000円、障害者とその付き添い1名は一人500円です。私は手帳を荷物の中に入れて名古屋駅のコインロッカーに置いてきてしまったので、有人カウンターで1000円と音声ガイド機器のレンタル料500円を支払って入場しました。
 入場してすぐに音声ガイドの機器を受け取りましたが、なんと操作は全てタッチパネルで行うのです。流行のスマートホンやアイパッド形式(私はそれにはふれたことがありませんが)なのには驚いてしまいました。係員に教わろうとしたのですが、次々と客がきて取り合ってもらえませんでした。目の見える人は展示物の前で説明文を読めばすみますが、目の不自由なものはそれができないために音声ガイドを利用するわけです。その目の不自由な者が全く使えない機器を貸し出すとは何事かと、初っぱなから苦い思いをさせられました。
 私は何度か都内の大きな美術館へ絵画鑑賞に行ったことがありますが、そこでは電話機の子機を大きくしたよなボタン式の機器でした。絵画鑑賞ですから勿論少しは視力がある者が行くわけです。ですから、絵画の横に書いてある大きな数字を見つけて、その数字のボタンを押すと絵画の説明を聞くことができるのです。ここでもボタン式の機器を用意すれば、見える人と行った視覚障害者も、車両の説明文の番号さえ教えてもらえば、自分で機器を操作して説明を聞くことができます。また、どこか忘れましたが音声ガイド機器を持って順路に従って進んで行くと、それぞれの場所で電波が出ていてそれを機器がキャッチして音声ガイドしてくれるところもありました。新しくできた施設故にバリアフリー施設にしようという考えがなかったことは寂しいことです。見えない人や視力の弱い人はこないという前提なのでしょうか。
 さて、リニア館の概要ですが、建物は一部2階建ての長方形です。畳四畳の部屋を想像してください。手前に畳を横に1枚、その向こうにたてに2枚、一番奥に横に一枚置いた状態です。手前1枚の部分はエントランスエリアとシンボル展示スペース、真ん中2枚のうち左1枚部分が新幹線、右1枚部分が在来線車両の展示スペース、奥の1枚部分が収蔵車両展示スペースになっています。シンボル展示スペースは2階建ての1階部分ですが、他の展示スペースは天井までの高い吹き抜けで、自然光を取り入れた明るいエリアです。この吹き抜けの部分の左右の壁沿いが2階建てになっていて、右側壁沿いには手前から鉄道ジオラマ、新幹線シミュレータ、在来線シミュレータ、リニア展示室です。その2階部分は歴史展示室、体験学習室、飲食コーナーなどになっています。左側は鉄道の仕組みコーナーで、その屋外には117系が展示されています。
 先ずはシンボルエリアに踏み込んだ途端、足が止まってしまいました。真っ暗な部屋で、その中に3台の車両がライトアップされていました。左からC62機関車、新幹線試作車300X、そしてリニアMLX01−1です。それらは129km/h、443km/h、581km/hそれぞれの分野で世界最高時速を記録した車両です。リニアの車内に入って見ました。窓はほぼ正方形です。片側2席の座席が左側絵だけ数列置いてありましたが、腰掛けることはできません。これは展示物すべてそうです。大宮の鉄道博物館のように、特急列車の中で一休みというわけにはいきません。
 新幹線コーナーには、ドクターイエロー、300系の1号車と16号車、100系の2階建て食堂車、0系の食堂車が置かれていました。いずれも中に入ることができますが、ただ通り抜けするだけです。若い頃は、例えカレーライス一枚程度であっても、食堂車で食事をしてつかの間の贅沢を味わうのが何よりのたのしみだったので、この二つの車両はとても懐かしく思い出されます。できることなら座って当時の思い出に浸りたい気持ちでした。
 在来線コーナーには、キハ181、クハ381を始め電車、客車、機関車併せて1
0両があります。電車や客車は中に入ることができます。客車車体の横に縦の白い線が3本入ったスハ43の三等車は子供時代を思い出します。1956年4月の1ヶ月間、鹿沼から鶴田まで盲学校へ通うために列車通学をしました。小学4年生のときです。勿論、鉄道のことなど何も分からない頃ですから、乗った客車が何であるかなど知るよしもありませんが、その時に乗った列車に白い縦線が3本はいっていた事だけは鮮明に覚えています。そして、当時は日光線にもブルーの車体に薄いグリーンの帯を巻いた二等車が連結されていたのです。あれには乗ってはいけないと言い聞かされていました。
 一番奥の収蔵車両コーナーには、0系のビュッフェ車を含む14両があります。一度も足を踏み入れたことのないマイネ40やオロネ10の優等車、「しなの」の先頭展望車であったクロ381、そしてキハ48000という古い気動車もありました。
 また、大垣夜行時代に300円のグリーン券を買って、何度も乗車したサロ165の懐かしい車両もありました。ただ残念なのはこの14両は全て正面からしか見られないようになっています。また鉄道博物館の例を出しますが、あのように斜めから見られるようにしてくれたらよいのにと思います。
 ところで、音声ガイドですが、「エリアから選択」と「車両から選択」の二つの大きなメニューががあります。エリア選択はシンボル展示、新幹線展示など各エリアの概要が案内されます。車両選択では各車両の説明があるのですが、そこへ至るのに3通りのメニューがあります。@展示物の説明標示板に書かれている音声ガイド番号で選ぶ、A展示物配置図で選ぶ、B同じく車両番号で選ぶです。私はAのメニューを何とか使ってガイドを聞きましたが、それとても、実際の車両の位置と画面の小さな配置図を見比べて、目的のところに指をタッチするという弱視に取っては困難な作業になります。隣の車両に指がいってしまうことが何度かあり、やっとなれた頃には見学が終わってしまいました。@とBはさらにそのしたの階層のメニュウがあり、うまく使いこなせませんでした。
 今度は右側壁沿いに並ぶコーナーです。
 先ずは鉄道ジオラマですが、入場待ち時間が30分とあったのでパスしました。音声ガイドによると、東京、名古屋、京都、奈良などの街並みが配置されていて、そこを様々な列車が走っているようです。次の新幹線シミュレータの部屋には大きなスクリーンとN700系の運転台があり、運転台から見える動画が映されていました。スピードが上がるにつれてモーター音が高くなったり床が少し振動したりと、実際に列車に乗っている感覚がありました。最初は右手に富士山が見える景色でしたが、最後に減速して停車したのは名古屋駅とのことでした。このシミュレータの操作をするには、入場券に付いている抽選券を応募箱に入れての抽選です。
 在来線シミュレータの部屋には小型機械が何台かあり、自分の前のディスプレイを見ながらそれぞれが運転を楽しんでいました。分かりやすくいえばケームセンターで運転を楽しんでいるようなものですが、これも抽選です。
 そしてお目当てのリニアコーナーです。2013年に完成予定の車両模型の座席に20人ほどが座り、正面スクリーンの映像を見ながら、スタートから加速し、時速500キロのスピードに到達し、その後減速して停止するまでを体感します。スピードの数値も一緒に表示されます。トンネル内の画像だと照明が速く流れるので速さが比較できますが、外の景色だと期待ほどのスピード感ではありませんでした。わずか3、4分の画像ですが、見るまでに30分ほど並びました。車両を出ると、リニアの仕組みが模型で展示されていました。ひとつだけ分かったことは、列車がカーブを通過する時の磁石の仕組みでした。カーブの内側はN極とS極が引き合って車体を内側に傾け、カーブの外側ではSとS(反対向きカーブの時の外側ではNとN)が反発しあってやはり車体を内側に傾けるということです。この二つの作用で遠心力に対抗する訳です。この他にも浮き上がる仕組み、前進する仕組みの装置、初代からのリニア車体の模型などいろいろあったのですが、自分の立つ位置から距離が離れていて細かい部分がよく見えないことや、何しろ小さな子供がたくさんいて、いろいろ動かしてしまうので理解できるまでじっくり見ることができませんでした。
 2階の体験学習室は子供が多く、歴史展示室はガラス戸棚なのでいずれも足を踏み入れずに終わりました。
 最後に見たのは左側壁沿いの鉄道の仕組みです。狭軌、標準機の線路幅の違い、ポイント切り替えの仕組み、どこかの駅を例にしてATCやATSの仕組みを説明した模型などがありましたが、これもじっくり見ることができませんでした。
 2時間半ほどで一回りしてみましたが、車両展示と映像が中心で、模型も小さかったりガラスの中に収められていて、視覚のない人達がどれだけ楽しめるかは疑問に思いました。博物館はどこもそうなのですが、手で触れられないことやガラスを隔てているので近寄って見られないのは致命的です。皮肉を込めていうならば「博物館」の名称を使っていないだけ良心的?なのでしょうか。また、歴史展示室を見ていないので何ともいえませんが、大宮の博物館に比べると歴史的重みが感じられず、「リニア」の宣伝目的で作られたという気がしました。
 出口付近には「ミュージアムショップ」がありますが、そこへ入るにも長蛇の列でした。ですから、何が売られているやらさっぱり分かりません。大半の来館者は鉄道ファンではない方だろうと思うのですが、彼らはいったい何を買うのでしょうか。
 以上、ざっと書いてみましたが、何となく否定的な内容になってしまったようで、心苦しく思っています。今回は突然のことで、また、連休という最悪の時の見学になってしまいましたが、今度は混雑していないときにもう一度ゆっくり見学してみようと思います。どなたか行かれたら違った視点でレポートをお願いします。

【追記】 この原稿がアップされた後、当会のメーリングリストに、落花生人さんより「音声ガイドについては「リニア鉄道館」のホームページの中のFAQの所に「【館内ご利用について】音声ガイドはどのようなものですか?タッチパネル式で当館の概要や各展示のトピックス、各車両の見どころを音声と画像で解説しています。
目の不自由な方などのための押しボタン式もございます。」
と書かれてありますので、今後行かれる方で、音声ガイドをご利用の方は受付で尋ねられると良いと思います。
 という補足をいただきましたので、ここに追記させていただきました。。
 なお、リニア・鉄道館のホームページは、こちらになります。
http://museum.jr-central.co.jp/
 杉並木さん、落花生人さん、ありがとうございました。

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