新大阪駅へ入線するトワイライトエクスプレス

 トワイライト
 エクスプレス


Twilight Express




★☆★贅沢な21時間☆★☆ (前編)


 あれから5年半余の月日が経ち、あの時の記憶ももう既に遠い過去のものになろうとしていた2001年の秋頃、ふと、来年は 是非冬に北海道へ行ってみたいものだと思い付き、5年半のあの時の記憶が頭を過りました。「トワイライトに乗ってみたいなあ」と考えるようになり、過去の時刻表 で、元旦の日にトワイライトが運転されているかどうかを調べると、毎年運転されているような感じでしたので、駄目元で発売日の1ヶ月と2日ぐらい前に駅にその旨を 伝え、その時を待ちました。「これは人気商品だからね」との言葉でしたが、諦めはしませんでした。そして12月1日、仕事から帰ると「どうやら切符が取れたらしいよ」 との報告。それは何か難関の試験にでも合格した時のような思いにも似ていました。ついでに6000円の日本海会席御膳も予約して、僕にとってはこの上ない 贅沢な時間が約束されました。まさか5年半後にこの夢が実現する何て思ってもいませんし、想像すらしていませんでした。
 2002年元旦、午前11時50分。新大阪駅12番線。さすがにホームにはそれ程人もいなくて、閑散とした状態でした。しかし今日は元旦ということもあり、 11時55分には臨時の特急「雷鳥」新潟行きが設定してあり、何とやって来たのは国鉄色の485系。思わず「うわー」と声を上げてしまう程でした。 久し振りに在来線の長距離列車を見送ったような気がして、本当の意味での「特別な日」というのを肌でひしひしと感じると同時に、国鉄時代に戻ったような 気分にもなりました。
 定刻の12時9分。いよいよ札幌行きのトワイライトエクスプレスが入線です。これから21時間という長さを思えば、何か国際列車にでも乗って行くような気分にも なりました。車内へ入れば列車の中とは思えないような感覚になり、これから自室になる6号車10番の扉を開けました。最初は「少し手狭かな」という印象も持ちましたが、 荷物をしまえば十分寛げる程のスペースはありました。寝台特急特有のオルゴールの音はありませんでしたが、早速車内放送が流れ、 「西日本が誇るトワイライトエクスプレスをご利用下さいまして有難うございます」から始まり、普通の列車で良く聞くような放送でした。駅で購入した蟹ちらし寿司を食べてから、 乗るまで判らなかった2つの謎が解けました。

B寝台ツインの通路 B寝台シングルツインの通路 トンネルの中で輝きを増す室内灯



 その謎とはまず、シングルツインとは、上段が固定式のベッドであり、下段が簡易式のベッドにもなるが椅子にもなる。割高な料金を払えば2人でも利用出来るということ。
2つ目は5年半前に積み込まれているパンは大阪を出てから1時間後に営業を始めるランチタイムのメニューの中に「サンドイッチ」というのがあり、多分その食材に使われるであろう ものだなということが判りました。
 最初の停車駅、京都に到着。どのぐらいの乗車人数があったのが、判らないのが個室ならではのもの。しかしながらドア越しに声が聞こえたので、多少はあったのだろうと思いました。 東海道線と判れて湖西線を行くうち、トンネルの数も増し、その度に車内の豆電球の輝きが暖かく包み込んでくれて、良い雰囲気をも醸し出していました。13時40分。敦賀に到着。 時と場合により24分停車するのもありますが、今回は7分だけ。しかし外に出る余裕はありました。車内放送では「車外に出られる際には、浴衣姿では出ないように」との旨を告げて いました。ここで名古屋からの特急「しらさぎ7号」に先を譲る。発車後は今から入る北陸トンネルの説明がありました。 在来線では2位の長さを誇るトンネルという説明に続き、後に通過する1位の青函トンネルには午前3時7分に突入することも加えられました。尚通過する時にはサロンカーでその説明会 を行うので、希望者は午前3時にサロンカーへお越し下さいとのことでありますが、後13時間後。改めてその長さを感じる時でもありました。
 福井を過ぎれば景色は一変田園風景に。しかし雲がどんよりとしていることと、冬ということもありもう夕方のような感じでした。2時過ぎ、武生に到着。しかしお客さんを乗せる為の停車 ではなく、ここでも特急「サンダーバード」に道を譲りますが,、この電車は大阪を42分後に発車した特急でして、一気に追い詰められたということにもなります。 「特急が特急に抜かれる」というのは、言葉の響きとしてはあまりぱっとしませんが、この列車はサービスの面での特急だと思いました。スピード面では決して特急とは言えないと 思いますが、その受けるサービスは格別な物がありました。しかし今回は別に急ぐ旅ではないので、それを特に気にはしませんでした。
トワイライトエクスプレスが走る路線  個室でふんぞり返るのがあきた僕は、車内の散歩に出かけました。まずは3号車のサロンカー。薄暗いシャンデリアに紅色を 基調としたソファ。外が見渡せるように天井までのパノラマは列車とは思えないような豪華さを演出していました。食堂車は準備中で 入ることは出来ませんでした。7号車のサロンでたまたまワゴンサービスと出くわした為、何も買わずに終わるのももったいないような 気がしたので、トワイライトのロゴマーク入りのレターセットを買いました。まるでシティホテルの全てをコンパクトに纏めたような編成。 A寝台やスイートは伺うことが出来ませんでしたが、写真で何度か見ているので、ここでは想像だけに留めておきました。
 富山を出てから間もなく、冬の空は既に暗くなり始めておりました。本来ならばここからがトワイライトのメイン。日本海の夕日が見られる場所になりますが、今回は冬ということもあって それを望むことは出来ませんでした。5時過ぎに部屋に運ばれて来た日本海会席御膳を食べながらふと窓ガラスに目をやると、映し出されたのは、自分の顔と時より流れる町の灯だけ。 しかし車内放送ではそれをカバーするかのように説明がこまめに入り、耳を楽しませてくれました。食後は再び寛ぎタイム。列車ならではの時の流れを存分に満喫していると、家からの電話。 親戚が来ているとのことをまるで他人事のように聞き、そうしているうちに、その日最後の停車駅。新津に着きました。またこの新津はこの列車にとっても本州最後の客扱いがある停車駅ともなっているのです。

後編へ続きます
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